三叉神経痛、舌咽神経痛、片側顔面けいれん

三叉神経痛は顔面、特に頬部、下顎の数秒から2-3分に及ぶ堪え難い痛みです。歯磨きや食事、洗顔により誘発され、食事が満足にとれなくなります。季節性があり、痛みがしばらく遠ざかることがあります。

原因は、三叉神経が脳幹に近い根元で血管(上小脳動脈、前下小脳動脈、静脈)と接触することにより、痛みが誘発されます。また、良性腫瘍(髄膜腫、聴神経鞘腫、類上皮腫など)が原因のこともあります。

特徴的な痛みの性状から多くの例で診断が可能です。 MRI, MRA検査を行うことにより、圧迫血管、腫瘍の存在が同定できます。

痛みは抗けいれん剤であるテグレトールが有効です。この薬は強い眠気、薬疹、白血球減少、肝臓障害などの重い副作用がでることがあり、慎重な対応が必要です。薬の効果が不十分、また、副作用がある場合は手術が有効です。

耳の後ろを6 cmほど切開し、血管があたらないように移動し、小さなこよりで固定します。腫瘍がある場合は腫瘍を摘出し、血管が間にはいっている場合は、やはり移動します。90%以上の患者さんが、手術後痛みが消失し、それまでが嘘のように、活動的で幸せな生活を送られています。

三叉神経痛

 

舌咽神経痛

 舌咽神経痛はのどの知覚を司る神経です。三叉神経痛と同様にこの神経(9番目の神経)の根元に後下小脳動脈があたっていることにより起きます。のみ込んだり、人と話をする時に強い喉の痛みが起きます。

患者さんはとても辛い思いをされています。しばしば診断がついていないことが多いのですが、舌咽神経痛を疑うことにより、診断が可能です。三叉神経痛と同様にテグレトールが有効です。 MRI, MRAにより血管の接触が同定できます。

手術は薬の効果が不十分、また、副作用がある場合に有効です。三叉神経痛の場合より少し下方を開けて、血管を移動します。術野が深くなりますので、少し難しくなります。小脳の可動性を持たせて、適切な剥離が必要になります。

 

片側顔面けいれん

 片側の下眼瞼周囲のけいれんに始まり、ひどくなると顔の下半分がけいれんし、瞼が十分に開かなくなります。人と会って話をしたりする時に強くでる傾向がありますので、仕事で大変困ります。また、瞼がけいれんのために開かないので、車を運転するときに大変困ります。何より患者さんはとても不快です。いつもでているわけではなく、精神的にリラックスしている時や、季節性に落ち着くことがあります。

 片側顔面けいれんの場合も、やはり脳幹から顔面神経が出る根元で血管(前下あるいは後下小脳動脈)が接触することにより、けいれんが誘発されます。また、良性腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、類上皮腫など)が原因のこともあります。

特徴的なけいれんから多くの例で診断が可能です。 MRI, MRA検査を行うことにより、圧迫血管、腫瘍の存在が同定できます。

お薬では抗てんかん薬のクロナゼパムなどが試されますが、眠気が強く効果が不十分です。ボトックス注射が効果的ですが、3ヶ月で効かなくなり、再度注射が必要です。生命に別状があるわけではないので、気にならない方はよいのですが、顔面けいれんがひどく不快な場合は手術が有効です。

耳の後ろを6 cmほど切開し、血管があたらないように移動する手術は大変有効で、根治的です。太い椎骨動脈が後押ししている場合は、少し手術が難しくなります。98%以上の患者さんが、手術後けいれんが消失し、それまでが嘘のように、活動的で幸せな生活を送られています。

顔面けいれん1