頭蓋底髄膜腫

 

髄膜腫が脳の底面にできると(頭蓋底髄膜腫)、脳神経や穿通枝という脳の深部を栄養している細い血管などの大事な血管を巻き込み手術摘出が難しくなります。

これまでに 131例の深部頭蓋底髄膜腫の手術を行いました。2002年より、脳神経、血管を温存し、十分に摘出するために、腫瘍と正常構造物との剥離面をクモ膜だけでなく、より腫瘍に近い面での剥離を工夫しています。

脳幹などに接している部位では、腫瘍表面の静脈と共に肥厚した腫瘍表面のクモ膜、炎症性被膜を正常構造物に寄せるように剥離しています。(勝手に membrane surgryと読んでいます。物理の世界では(リサランドール+若田光一、異次元は存在する、 NHK未来への提言)、 membraneを braneと称していますので、 brane surgeryと書いたら、同僚から スペルミスといわれました。)この剥離法により、穿通枝などの血管の傷害はなくなり、脳神経障害も頻度が少なく、回復可能な状態で温存できます。クモ膜面のみでの剥離を進めていくと、癒着した脳神経、穿通枝を裸で剥離することになり、傷害する機会が増えてしまいます。

この剥離法を考えたきっかけは、さる高名な脳神経外科医の講演を聞いたことからです。すばらしくうまく剥離して、腫瘍を全部摘出できたと思ったのに、術後に穿通枝の傷害による梗塞を合併した症例を何例も見せていただきました。原因はわからないとのことでした。穿通枝を裸で剥離することが要因ではないかと考えています。

海綿静脈洞などに浸潤している場合は、解剖学的に摘出可能な部位を減圧します。神経、脳幹付着部、海綿静脈洞に残存させた腫瘍には、手術による画像の影響がとれたところで、定位放射線治療を併用します。特に、大きな斜台、錐体部、蝶形骨縁内側の腫瘍では併用治療を行う頻度が高くなります。

頭蓋底髄膜種
頭蓋底 2

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経錐体骨アプローチ

頭蓋底手術手技を用いて、脳をしぼんだ状態にして、浅く広い術野で手術を行うことが大事と考えています 。前錐体骨アプローチという方法があります。 Kawase’s approachという有名な方法ですが、斜台錐体接合部の視野は他の方法では得られないほど見事で、この部位の安全で十分な手術が行えます。詳細を教えていただいて、これまでに 38例の錐体斜台部の手術を行いました。いずれの方もお元気に回復されています。少し、 modifyさせていただいて、前方の術野が広く見えるようにして手術を行っています。

Aoyagi M, Kawano Y, Tamaki M, Tamura K, Ohno K.  Combined extradural subtemporal and anterior transpetrosal approach to tumors located in the interpedunclar fossa and the upper clivus. Acta Neurochir (Wien) 2013,155:1401-7

 

経錐体骨1