モヤモヤ病

モヤモヤ病は、頭蓋内で脳を栄養する内頸動脈終末部が両側性、進行性に狭窄、閉塞する原因不明の病気です。別の経路を通って血液の流れが補われれば(自然の側副血行路)症状はでません。

側副血行路が不十分であったり、狭窄、閉塞の進行が速くて追いつかない場合、脳に行く血液が不足して脳が酸素不足になり、脳虚血症状が起きます。程度によって、手足が一時的に動かなくなったり(一過性脳虚血発作、transient ischemic attack, TIA)、脳梗塞、けいれんなどを起こします。

自然の側副血行路が不十分の場合、手術を行い、新たな血液が行く道(血流)を作ってあげます。私たちのグループは、1978年に武蔵野日赤病院に在籍している間に頭皮の動脈(浅側頭動脈)から脳に新たな血液が行く道(血流)を作ってあげる間接的バイパス法を考案しました (EDAS)。

この方法は、現在では、世界中に広がり種々の変方を含めて、侵襲が少なく効果的な第一義的な手術として考慮されています。2003年には、進行して後大脳動脈領域の血流が低下した症例に対して、硬膜に多数の小さな穴をあけて、骨膜(骨を覆う膜、後ろは厚く、血流が豊富)より、脳に新たな血液が行く道を作る方法を考案しました(EDPS)。

モヤモヤ病の脳表の血管は拡張している状態で、空気に触れることだけで炎症反応を起こし、酸素不足が起こることが予想されます。後大脳動脈領域の血流の低下は、病期の進行した方に起こることが多く、手術に際して脳の酸素不足(虚血、梗塞)が起こりやすい状態になっています。硬膜に多数の小孔をあける方法は、脳表をほとんど開けることがなく、手術合併症を最小にして、十分な血流が得られる簡便で有効な手術方法です。

モヤモヤ病の原因は未だ不明です。家族発症例の遺伝子解析が進んできて、近い将来原因遺伝子の同定と機能解析により、病気の発症、進行を押さえる方法が発見されることが期待されます。

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