髄膜腫

 

髄膜腫は脳を覆う髄膜(主にくも膜)から発生する良性の腫瘍です。脳の外側からできて、脳を圧迫しながら、ゆっくりと大きくなります。原発性脳腫瘍のなかでは最も頻度が高く、25%くらいあります。成人女性に好発し、脳との境界は原則としてはっきりしています。

腫瘍が大きくなると脳との境界の軟膜、くも膜を溶かして境界がはっきりしなくなり、炎症を起こして脳浮腫がでてきます。脳を覆う膜は大脳の表面だけでなく、いたるところにありますので、脳の底面(頭蓋底)や脳の深部など厄介な場所にできることがあります。脳の底面にできると、脳神経や穿通枝などの大事な血管を巻き込み手術摘出が難しくなります。

大きくなると、頭痛、けいれん、運動麻痺や視野障害などの脳局所症状、また、頭蓋底腫瘍では、視力、におい、眼の動きの障害などの脳神経症状を起こします。 CT スキャンや MRIなどで、たまたま見つかった例では、経過を見ていると大きくならないものと、だんだんに大きくなる腫瘍があります。

どういう腫瘍が将来大きくなって治療が必要になるかは、今のところわかりません。髄膜腫は脳の外側にできる腫瘍で、通常良性ですから、脳の表面にあって、大事な機能のない場所で、太い静脈などに癒着していなければ、完全にとることができて、再発することなく治ってしまいます。

一方、頭蓋底や脳の深いところにできた場合は、大事な血管、特に穿通枝という脳の深部にいっている細い血管や、脳神経がからみついています。うまく摘出するには工夫が必要です。また、意図的に腫瘍の一部を残した方がよい場合があります。

こうした場合、残った部分に、ガンマナイフ、サイバーナイフなどの定位放射線治療を行うことがあります。病理組織検査で細胞の勢いが少しよい腫瘍(異型髄膜腫)では、しばらくして再発することがあります。このため、腫瘍摘出に加えて放射線治療を併用することが多くなります。細胞の勢いが強力な悪性髄膜腫(約 2 %)では放射線治療を併用しますが、短い期間で再発し、摘出術が何度も必要になることがあります。

髄膜種