頸部内頸動脈狭窄症

頸部総頸動脈は外頸動脈と内頸動脈に分岐し、この分岐部より遠位3 cm位までが身体部位の血管でその後は脳の動脈に構造が変わります。丁度この部位に所謂動脈硬化性の内膜肥厚が起きやすいことが知られています。

この部位は身体部位の血管ですので、アテローム硬化性内膜肥厚が起きます。糖尿病や高脂血症に関連した、粥状動脈硬化を起こし、しばしば内腔壁が壊れてえぐれて、潰瘍を形成します。この部位が血栓の源になり、できた血栓がはがれて脳の動脈に飛んでいって、脳血管を閉塞し、脳梗塞を起こします。

そのままにしておくと、つぎつぎと血栓が飛んでいきますので、治療が必要です。この病態はこれまで欧米人に多いといわれてきましたが、最近は日本人でも頻度が増えてきています。食生活の欧米化が要因といわれています。

頸部超音波検査、MR血管撮影により診断が可能です。

治療は、まず内服薬です。血栓は血小板が元になって凝集するので、抗血小板凝集薬を服用します。クロピドグレル、アスピリン、シロスタゾールの3種類の薬があり、それぞれ長所と欠点があります。また、糖尿病、高脂血症、高血圧の管理が重要です。

内服薬だけでは、効果が不十分と判断される場合に外科的治療を行います。原則として従来から行われている、動脈を切開し肥厚内膜を切除する、血栓内膜剥離が勧められます。

この治療では、手術中、直近の血栓形成、あるいは血管の一時的遮断による脳梗塞、また血流が過剰に流れる為におこる脳出血の合併の可能性があげられます。手術中の丁寧な操作、血液が凝固しにくい、あるいは血栓を起こしにくい薬剤の使用、術中に内シャントを使用することにより、脳梗塞の発症を最小限にします。

術後に血圧をコントロールすることにより脳出血を予防できます。病巣が手術により落ち着くと、手術施行部位からの血栓形成はなくなります。狭窄部位が深部の場合、高齢、合併症などのため手術が行えない場合は血管内手術を行い、ステントをおいて、血管を拡げて、血栓が飛ばないように処置します。

これまでに、約100例の頸部内頸動脈狭窄症例に対し、血栓内膜剥離手術を行いました。この手術は細かな配慮を行えば、合併症が大変少ない効果的な手術です。

初期の2例で虚血症状がありましたが、出血はありません。治療を躊躇して脳梗塞により後遺症を残した方を何例か経験すると、この手術治療こそ受けていただきたいと思います。

頸部内頸動脈狭窄1

頸部内頸動脈狭窄2